ウイルス」に揺さぶられて
ウイルスは不思議な存在です。百年に一度と言われる
恐ろしいコロナウイルスの感染の只中にある今は
厄介なものとしか、このコロナウイルスに対して
思えませんが、私達はウイルスが存在しなければ
この世に生まれてくることすらできないのかもしれません。
なんと、胎盤形成にウイルスが関与してるそうですから。
胎児が父親から受け継ぐ遺伝形質は、母体にとっては遺物です
なので、母親のリンパ球に攻撃されるはずですが
胎盤には特殊な膜があって、胎児に必要な栄養素だけを通し
胎児を攻撃するリンパ球の侵入を防ぎます。
この膜の形成に人内在性レトロウイルス
(太古に感染したウイルスが宿主の生殖細胞に入り込み
ゲノムに埋め込まれて子孫に伝わってきたもの)
が関わっていると考えられてるそうで、だとすれば
私達はウイルスのおかげで生まれてきたわけで。。。
『ウイルスの意味論』という本がありますが
著者の山内一也先生は、その中でこんなことを言っています。
「ウイルスは我らの外適であり、我らを構成する重要な要素です」
ウイルスは、私達を生かしも殺しもする存在なんです
ウイルスは生物と生物の間を飛び交い、体に入ってきて
「外来の遺伝子」として振舞い始めるんですね。
そう思った時、地球に生きている生物は、実は巨大な
一個の生命体を構成する細胞のようなものでその間を
ウイルスが行き来して、それぞれを変化させてるという
奇妙なイメージが浮かんできました。その変化が
ランダムなものなのか、あるいは何らかの法則に
従ってるのか、我々には分かりませんが、ウイルスは
もしかしたら「揺さぶる」役割を背負ってるのかもしれません。
安定してるものを揺さぶって壊して生態系を絶えず
変化させ続ける役割を。。。持ってるんでしょう。
これは私の空想に過ぎませんが、ウイルスとの
私達の関係を思う時は生態系全体で考える大きな
視野が大切で、そうでなければ見えないことが
あるように思えるんです。。。。
「死者数十万も。ウイルス感染時代、最悪のシナリオとは?」
これはNHKが配信するNスペP1USの記事タイトルですが
今年ではなく3年前の記事です。人類の生活圏の急速な
拡大が自然環境を大きく変え、私達は頻繫に新たなウイルス
のパンデミックに襲われるようになるのだろうと警告され
続けていて、それが現実のものとなり、今後もそれが
頻繫に起きる可能性がある。そう言われてるんです。
今は、病気に例えるなら急性期ですから、とにかく
救える命を救うための対策を最優先で行うべきです。
ただ、同時に、遠くまで思考の網を広げて行動を
始めなければ、蛇口は開きっぱなしのまま床を
雑巾で拭いてるようなもので苦難は果てしなく
続くでしょう。何とかしないと、良くならない。
パンデミックの只中にある今、つくずく思うのは
世界のすべてが繋がっているということで
一つが揺れればすべてが揺れる、問題は多岐にわたり
どこから手を付けていいのか、、変わらず立ち竦んでしまう。
それでも、危機というものは、内住していた問題をあらわに
する事で、改善の道を見せる力も持っています。。
人類全体が同じ問題に向き合ってる今回のパンデミックは
人類が、これまでとは全き違う根本的なレベルでの変化を
起こす契機にになるのかもしれません。
人という生き物は環境の衛生を一つながりのものと考えて
関係者が連携して問題に取り組もうとする「ワンヘルス」
という国際的な取り組みが注目されていますが
この取り組みのように多様な分野の専門家たちが
横断的にむずび付き議論を交わす場を提供する
それが大切なものと思われます。。
群れで生きる私たちにとって「社会」も生存に必須ですから
自然科学系だけでなく、政治や経済、文化、福祉、外交など
様々な分野のプロフェッショナルが国境を越えて議論を
深めることができる場が必要だと思います。。